Craftsmen

Interview HIROKO OOURA
製造次長:大浦 広子

生地も生き物だと思って、
向き合う。

私たちが日々触れているこの生地は、人と同じように生きているし感情もある。だからこそ、ちょっとした変化を読み取って柔軟に手を加えなければならない。その姿勢がなければ、ものづくりは出来ないと思っています。
同じ布でも部分部分によって、微妙に色が違っていたり、動きが違うということが多々あります。同じ名前の生地であっても、同じロールに巻かれていても、その全てが同じようにいかないということは縫製をしていると痛いほど感じます。そのため、パーツが揃い、いざ縫製にはいってからの細かな調整は欠かすことが出来ません。
ひとりひとりが担当する工程は決まっていますが、その前後の工程の理解、完成形のイメージを全員が共有しています。それにより微妙な調整を当たり前に行うことができ、結果的に均一な形と質の商品を生産することに繋がっています。

縫製の現場で、
品質と効率はイコール。

私が製造のチームを管理する上で気をつけているのは、手を動かしている人を迷わせないということです。少しでもやっている作業に迷いを感じたら必ず伝えてもらい、各工程のプロが“これでいいのかな“と考える時間をなくすことで、迷いから生まれる品質のばらつきを防ぎます。
サンプルの段階で行われる調整と、量産に入ってから行わなければならない調整。そのどちらも、目的はひとつのコートをつくりあげるためのものです。工程を担当している全員が一定の品質を保ちながら求められたスピードで要求に応える責任と向き合っています。私は、その努力を一着のコートとして出来る限り速くひとつの結果に繋げられるよう、判断し情報を与える立場だと思っています。
品質の高いコートをつくりあげる技術は、ここに揃っています。問題は、それをいかにして品質と効率を保ったまま結果に繋げていくかです。そのためには、大きなトラブルにも日々起こる小さな調整にも柔軟かつ的確に応えていけるチームであることが求められます。

コートに囲まれたこの環境が、
私たちを育てる。

自分のところが良ければ良いという考えでは、決して品質の高いコートは完成しません。縫製のミスはサンヨーソーイング全体の評価に繋がります。そういう意味で、同じ痛み・喜びを感じられるチームであることは、ものづくりをする上でとても重要だと思います。
私は、特別に何かをやったから今の形があると思っていません。求められるものに対して試行錯誤しながら忠実に応えてきた。そうした日々の積み重ねによって技術が体に定着し、少しの異変に気付いたり、課題に対する引き出しが生まれるのだと思います。
情報の伝達から足りない部分をどう補完し助け合うかの判断まで、とてもスムーズに行えることに日々感謝しています。出来上がったコートをみても、本当によく完成までたどり着いてくれたとしみじみ思います。積み重ねの中で今の私たちがあるからこそ、この環境が生きているうちに次の世代に繋いでいきたいという思いもあります。サンヨーソーイングのひとつの大きな課題として、今後向き合っていかなければならないと考えています。