Craftsmen
その型については、
自分が一番知っている。
CAD室では、作業を分担することはほとんどありません。自分の担当するコートが決まったら、サンプルから量産、量産時に発生するサイズ展開に合わせた大小のパターン、全てのパターンを最後までひとりが担当します。
パターンは、最終形に辿り着くまでにあらゆる問題を理解して適切に修正を加えなければいけません。お客様から頂いた仕様書を元に、足りていないパーツや品質のために芯地を入れる提案を行なうこともあります。修正の回数が多いからこそ、CADでパターンを制作したら、まず画面上で数字の確認を行ない、縫い合わさる部分が同じ数字になっているか、左右対称であるか、紙のパターン折り曲げながら確認していきます。
以前、パターンの制作を前身頃と後ろ身頃で担当を分けようとしたこともありましたが、逆に情報の共有が複雑になりました。一部分のサイズが変わればその前後、そしてまた前後と連鎖していき、ひとつひとつの数字をアップデートするため、全貌を把握していないと適切な判断が行えないのです。
経験や慣れをあてにしない。
資材が入ってくると、毎回検査を行なうので生地の特性がわかるデータが蓄積されていきます。それを元にコートになるまでに生地がどれくらい伸びそうなのか、または詰まりそうなのかを把握して形状を定め、縫い代や縫い始め・縫い終わりの目安、布を合わせる位置に切り込みを入れていきます。
あらゆる情報を加味して数字を導かなければいけない中で、一番の拠り所になるのは目の前にある今を表す情報です。同じ生地でも反応が違うことはよくあります。こうと決めつけて作業するのではなく、お客様の理想、縫製の声、出来上がりなど、今実際に向き合っているものからどうするべきかを導いていきます。慣れや経験ではなく、今起こっていることをどれだけ正確に吸い上げられるかが重要だと思っています。
CAD室の人間として、
発言する。
CAD室でパターンが出来上がらなければ、その後の裁断や縫製を進めることは出来ません。そのため、資材がいつ入ってきていつまでにパターンを型紙におこす必要があるのか私たちが把握出来ていないと大幅なスケジュールのズレに繋がることがあります。
朝行われる企画との打ち合わせでは、自分たちの今の状況を正確に伝えます。資材が入るタイミングによってCAD室が取りかかれるタイミングが決まるので、CADの中だけでなく企画との情報を共有し連携することが重要だと思っています。
CADはCADとして、ひとりひとり担当した型の責任を最後まで担います。他のチームに伝えるべきことを伝え、情報をもらう時はそれがいつ反映すべきものなのか紙に残して記録する。常に情報に囲まれ、何百という数のパーツを導いているからこそ、情報のやり取りには気を引き締めないといけません。
ほっとする瞬間は、一日の仕事が無事終わった瞬間ですね。帰るぎりぎりまでどんな修正が入るかわからないので、気は抜けません。でも、私は最後まで責任を持てることがこの仕事の良いところだと思っています。