[ジャケット]見返し抑え
Date : 2019.05.20
●本動画には工場長の解説がナレーションとして入っています。そちらをお聞きいただきながら技術のポイントをつかんでください
身体に吸い付くようなスーツを作るには、布が引っ張られすぎていても余りすぎていてもいけません。一枚では重力に逆らうことの出来ない布を、縫い合わさることで身体の曲線に沿った立体的な形状へと変える必要があります。この立体感を作る上でとても重要な働きをするのが生地の"ゆとり"です。

動画は、見返しの部分に残された適度なゆとりが工程を重ねる中で消えてしまわないように、ゆとりの居場所を作っている最中です。スーツはパーツを組み合わせていくことでひとつの形状となるため、"正しく揃える"ことにとても神経を使います。しかしこれを、折り紙の角と角を合わせるようなやり方で行なってしまうと必要だったはずの"ゆとり"はあっという間に削られてしまいます。

そのため、必要な部分に"ゆとり"が最後まで残っていられるよう、一時的に固定しておくべき箇所を止めておきます。この工程は最後の完成図や、縫製の過程で起こる変形の可能性、生地ごとに異なるプレスのかかり具合まで考えられている職人にしか行えません。この精度が高ければ高いほど、その後の工程はスムーズかつ正確に行われ品質に繋がっていくため、何事も始めが肝心であることを体現している工程と言えます。